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森に親しむ講座記録「大都会の森・目黒自然教育園」
実施日時 平成17年11月10日(木)
場所 目黒自然教育園
受講者数 35名
講師 和波牧子
アシスタント 遠坂、佐山、小橋、渋谷、高村
概要
- 今回は、『大都会の森・目黒自然教育園』と題して、大都会東京に残された貴重な緑地をとりあげ、その森林としての意味を、実際に歩きながら観察するとともに、秋の一日をじっくり楽しみたいと考えました。素晴らしい秋晴れに恵まれた一日でした。
参加者の方々に、自然教育園に来たことがあるかどうか尋ねたところ、講師の予想に反して、4分の3近い方々が、来たことが無いとの事で、少しビックリしました。
まず、自然教育園が国立科学博物館附属の研究・教育施設であり、普通の公園とは違うことを説明。さらに『国の天然記念物および史跡』に指定されている意味を、『自然教育園のおいたち』から説き起こし、そのことを頭の隅に入れながら、園内を散策してくださるようにお願いしました。
説明板や観察ポイントで、適宜説明を行いながら歩きました。植生の遷移、照度の話、土塁や館跡、下屋敷時代の庭園の名残の松の巨木の話、食物連鎖の話、シュロに代表される温暖化の話など、話題に事欠かないフィールドです。
長年にわたり、貴重な樹林地として維持され続けてきたからこそ、大都会の真ん中にありながら豊かな自然を、生き物を育んできたことを、あらためて実感できました。
ナンバンギセルの花を捜したり、ムクロジの実で遊んだり、ドングリ拾いをしたりと、いろいろ楽しめた一日でしたが、最後にもう一度、この森林の貴重さを再確認するとともに、陸の孤島のように残された自然を、守り続けなければならないことを話して締めくくりといたしました。
- 自然教育園の森
*樹木の
開園以来308種記録しましたが、現在62種がなくなっています。
現在、胸高直径10cm以上の、高木113種、大きくなっていない高木43種、低木種90種があります。
・クロマツ(214本)開園時400本以上あったが、大気汚染・遷移により減少
・ヤマザクラ(33本)開園時85本、常緑樹におされ減少
・エノキ(198本)大木の枯れが目立つ
・ムクノキ(392本)南方系・増加している。周囲 4.6mが最大
・ミズキ(1330本)落葉樹で最多、大木の枯れで減少
・ケヤキ(150本)成長が速く、最大木 周囲2.9m、樹高約28m
・スダジイ(1270本)昔、植えられた、樹齢250年の巨木あり、若木増える
・コナラ(328本)雑木林の生き残り、周囲3.6mの巨木あり
*森林の遷移
開園当時、大きな木もありましたが、林の下は御料地時代に毎年草刈りが行われ、見通しのよい森林でした。開園と同時に天然記念物に指定、下刈りは中止しました。
木の芽生え、ミズキ・サクラ類・ヌルデ・クサギなど陽性の樹種から、シロダモ・スダジイ・タブノキ・カシ類など、森林化・常緑化が進んでいます。
最大面積あったマツ林は、大気汚染・遷移の進行で減少の一途をたどっています。
広い面積の、ヨシなどの湿地群落も乾燥化が進み、ヤナギ・クルミ類・ハンノキ林に変化しています。
*変化した季節感
生物季節(開花・結実・落葉)の温暖化による変化が現れています。
・冬の平均気温 2℃〜5℃(開園時)→ 6℃〜9℃(暖冬化がすすむ)
・東京の平均気温の上昇 2℃〜3℃
・サクラの開花 4月上旬から 3月下旬に
・紅葉・落葉 半月以上の遅れ 12月に
*亜熱帯化する都市林
都市の気温の上昇の影響は、自然教育園の森にも見られます。
シュロをはじめとする南方系植物の繁殖です。
要因:
@暖冬のため厳しい寒さが無くなり、南方系の植物にとって苦手な冬の季節が短くなった。
A長年、他の自然から隔絶された都市林だった為、シュロや南方系植物の競争相手がいなかった。
B都市なので、庭や公園に植栽されていた南方系植物が周辺にたくさんあった。
ヒヨドリ・ムクドリ・ハシブトガラスなど都市に多い鳥によって種子が運ばれた植物が多いのも特徴です。また、自然教育園は、もともと森林になっている為、帰化雑草の繁殖は限られています。
・シュロ(平安時代に中国より渡来。田植えの代縄・亀の子タワシ等に利用。ヤシ科の
なかでは耐寒性が強い。シュロの芽生えは、照度0.1%でも耐えられる。)
おわりに
海外の都市にも林はたくさんありますが、その多くが自然を破壊しつくして、新たに作った緑地なのです。自然教育園は、大都会の中の貴重な緑地として、また都市における自然教育の場として多大な貢献をしてきました。
『(自然教育園が)・・明治神宮・皇居など作られた緑地と異なる点は、下屋敷時代からの多様な自然が残っている点です。
一塊の野草、一匹のホタルですら、古い時代からの多様な遺伝子が受け継がれていると考えるからです。これらの遺伝子を守ってきたのは、絶えることの無かった樹木達の存在です。一本の木には若葉が芽吹き、花も咲き、実をつけ、何万という昆虫を養う食べ物を供給し、何十万枚の落ち葉で無数の土壌動物を養い、枯死木は、キノコや昆虫に供給されます。樹林地があるために保持される清水は、小川となり、池となり魚・トンボを養い、水鳥も集まります。こうした自然界の食物連鎖は、長年にわたり維持された樹林地の存在が不可欠なのです。・・・・・湿潤温暖な日本の気候が何度と無く荒廃しかけた自然教育園の林の立ち直りを助けたことはありますが、幾多の危機を乗り切ることができたのは、日本人の自然にたいする観念、敬意、とそこから発する努力が実った稀有の例で、世界に誇れる都市林と言うことができるでしょう。』
(萩原信介氏のリポートより)
(報告:和波)